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&Greenスペシャルインタビュー#24 エッセンシャルオイルブランド「Licca」 長壁ご夫妻

&Greenスペシャルインタビュー#24 エッセンシャルオイルブランド「Licca」 長壁ご夫妻

めぐる木々と水に感謝を

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長壁総一郎(おさかべ そういちろう)さん
青年海外協力隊として東ティモールへ赴任し、コミュニティヘルスケアの活動に従事。妻の早也花さんとみなかみ町へ移住し「Licca」を立ち上げる。地元の自伐型林業チームに所属し、地域の森林資源を管理しながら原料調達をおこなっている。

長壁早也花(おさかべ さやか)さん
青年海外協力隊としてラオス南部の児童館で活動。ラオスの自然豊かな景色が好きで、帰国後に自然を活かす知識を付けるためにアロマテラピーインストラクターの資格を取得。実践的に森の保全と利活用を行いたいとみなかみ町へ移住し、「Licca」を立ち上げる。

Licca 公式HP:https://www.licca-from-minakami.com/
公式Instagram:@licca_from_minakami
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みなかみの自然を香りに

群馬県みなかみ町発のエッセンシャルオイルブランド「Licca(リッカ)」。 2020年のブランド立ち上げから3年、現在は自社製造のアロマだけでなく、地元ホテルの調香や、小学校でアロマの魅力を伝える「香育」活動など、地域に根ざした活動も増えています。

自然資源の大切さを香りによって伝えられる移住先としてみなかみを選んだ決め手は、意外にも「人」だったと早也花さんは言います。

「みなかみ町はユネスコエコパークに認定されていて、自然と人間が共生する町としての取り組みも盛んですが、住民の方々が自分たちの畑や田んぼのために、あたりまえに自然を大切にされている姿を見て『私もこんなふうに歳を重ねていきたい』と思ったんです。移住した私たちにもとてもフラットに接してくださって、素敵な人ばかりです」

早也花さんの言葉の通り、「Licca」のアロマづくりも原料調達から販売までを長壁さんご夫婦自らの手で行い、みなかみの自然や人と密接に結びついています。

「アロマの原料は間伐材(森林が成長し過密となった山から樹木を間引いてできた木材のこと)を使用し、薪は製材所で廃棄処分になる端材を、水は工房の裏にある山中からひいた湧き水を使っています」

「このウッドディッシュも、職人さんが地元の樹木を手作業で磨き上げて作ったものです。実は、みなかみ町って日本のカスタネット発祥の町でもあるんですよ! 林業と結びついてきた歴史を知ってもらいたくて、カスタネット職人さんにアレンジして作っていただきました」

「ディスプレイに使用している木材も、近所のおじいちゃんが作ってくれたものです。これくらいの細さの幹って本来はあまり活用方法がないのですが、こうしてお店に置いてみるとディスプレイにもぴったりで! お客様からほしいと言っていただくこともあります」

「私たちよりも長い年月を生きてきた木を使わせてもらうので、自然への感謝もありますし、ある意味“命をいただいて暮らしている”という緊張感もあります。だからこそ、深くみなかみの自然の魅力を伝えられるというのが私たちの考えです。また、本来は廃棄されるはずの木材を活用することで、地域の方にとっても、みなかみの自然の価値をあらためて感じていただけたら嬉しいですね」

「同じ木でも、季節で香りが少しずつ違うんです」という「Licca」のラインナップには、モミやヒノキそのものの香りを抽出したエッセンシャルオイルはもちろん、早也花さんが地元の木々や植物をブレンドしたアロマディフューザーやルーム&ファブリックミストも。実際にかいでみると、心が落ち着くような深みのなかに、それぞれの個性が感じられます。中でも早也花さんにとってスギは思い出深い香りだそう。

「花粉のイメージがあるのでスギって嫌われがちですが、実は面白くて。実際に香りを知って驚くお客様も多いですし、切りたては青々とした香りなのに、少し寝かしてから蒸留すると甘酸っぱい、果実のような香りに変わるんです。エッセンシャルオイルの香りと、他の樹木とブレンドしたときで印象も変わります。日本の樹木からアロマを作りたいと思ったきっかけになった香りでした」

香りが生まれる場所

早也花さんに案内されて向かった工房では、総一郎さんにエッセンシャルオイルの蒸留工程を見せていただきました。

「枝葉を細かく粉砕して、香りを出しやすくしたあとに、釜で炊いて蒸留していきます。夏場は本当に暑いですが、この作業が好きなんです。生きている感じがするんですよね。ひとつひとつの作業は単純だけど、どこか本能的な充実感があるんじゃないかな」

画像のガラス容器内で分離した上澄みが、蒸留して得られるエッセンシャルオイル。同じ量の樹木を蒸留しても、種類によってとれる量は違うのだそう。

「いま蒸留しているのはアブラチャンという広葉樹です。夏から秋にかけてがピークなので、今年の蒸留はこれが最後かも。春先に黄色い花をたくさんつけたら、また再開します。実はこのアブラチャンから取れるエッセンシャルオイルは、他の針葉樹と比べてもごくわずかで希少なものなんです。日本の林業は木材価格の下落が課題視されている今、「Licca」のエッセンシャルオイルも日本の樹木の価値をいたずらに下げず、適正な価格で広めていきたいという思いはありますね」

総一郎さんご自身も地元の林業チームに所属し、山に入って間伐を行っています。実際に「Licca」の蒸留で使われる原材料としてご自身がとってきた間伐材を利用することも多いそうです。

「林業チームを立ち上げた3人にとって、地元の山は子供時代の遊び場でした。しかし、今は山が荒れてしまって、自分の子どもたちが安心して遊べるような場所ではなくなってしまって。だから自分たちの手で整備して次の世代に渡したいという思いからはじまったと聞いています。私自身もチェーンソーを持ち、木を切り倒していると感じることは多いですね。倒れていく木の大きな地響きを聞くと、その木が生きてきた数十年の重みを感じて、余すところなく活かしてあげたいと心から思います。切ったあとにも、いろいろわかることがあります。たとえば年輪って線と線の間が夏に育った部分で、線そのものが冬に育った部分なんです。その間隔のばらつきを見ると『この年は条件が良かったのかな』なんてわかったり。何も言わないけれど、木はたしかに生きていると実感します」

そう語る総一郎さんのとなりで、早也花さんもうなずきます。

「現場を知ると、日本の樹木ってこんなに奥深いのかと気付かされますね。枝葉を蒸留して“香り”という形にしたアロマは、自然のほんの一部です。「Licca」の香りでみなかみの自然に興味を持ってもらったら、ぜひその原料となった植物や、香りが生まれた場所について掘り下げてみると新たな発見があるんじゃないかと思います。みなかみにもぜひ遊びにきてほしいですね!」

「日本自然保護協会さんが赤谷の森(みなかみ町と新潟県の県境に広がる広大な国有林。イヌワシの生息地としても有名)を散策するツアーなどを開催されているので、そういうイベントに参加してみるのも楽しいと思います」

木々を支える水

「&Green」が収益の一部を寄付している自然保護協会を通じて出会った長壁さんご夫妻ですが、実は「Licca」の開店祝いとして「&Green」の植物をもらったことがあるのだそう。

「お花ではなく植物がほしいと知人に伝えたら『&Green』を贈ってくれたんです。リーフレットに添えられた花言葉がいいなぁと思ったのを覚えています」とは早也花さんの談。他にも、雄大な自然と暮らしをともにするお二人ならではの視点で「&Green」の魅力を教えていただきました。

「自然は人の手でコントロールできない厳しさもありますが、身近な植物は、自分たちで世話ができますよね。手をかけてあげて「新芽が出たな」とか「寒いから元気がないのかな」とか、日々の変化に気づけるのが嬉しい。見ても触ってもかわいいですよね! 観葉植物はなにか目的があって使うというより、生きている姿そのものを感じることに意味があるのかも」

同時に「&Green」は、水を循環させることで従来の3分の1程度の水量で生産できるという、資源を無駄にしない栽培方法も特徴です。利根川の水源を擁するみなかみ町に移住して5年、早也花さんも水と植物の関係性を日々感じるのだそう。

「水がきれいだと、そこで育つ植物も野菜も美味しくて豊かになります。お米も、その年の水によって全然味が変わるんですよね。稲刈り前の田んぼも、毎年色が違うんです。去年は、いままで見たことがないようなきれいな金色の稲が広がっていて驚きました」

最後に、めぐる自然を生かした「Licca」のものづくりの目指すところを伺いました。

「将来的には蒸留技術を発展途上国にも展開していきたいと考えています。水蒸気蒸留法は木と釜と水があればできるシンプルな製造方法なので農村部でも導入しやすいのが利点。たとえばエチオピアの樹木と水を使った精油や、フィリピンの木々を蒸留して作られたアロマなど、その土地だからこそ生まれた香りを作ることができたらいいですよね」

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