草木染めを通して「自分に優しく、社会に優しく」シルクランジェリーブランド代表・小森優美の“エシカルなもの作り”
エシカルファッションデザイナーの小森優美さんが手掛ける、シルクランジェリーブランドLiv:ra(リブラ)。シルクやオーガニックコットン素材を使った繊細で色鮮やかな下着の数々は、日本の伝統文化である「草木染め」の技法の一つ、「新万葉染め」で染色されています。
後編 「『社会を変える』ではなく、まずは自分を癒してあげること」
心地よさから広がる“エシカルの輪”
新万葉染めは少量の染料で染められることが特徴で、排水も少なく自宅で染め直しもできます。水を大切に使う&Greenとも共通する、環境に優しい技法から生まれたプロダクトです。
今回は小森さんに地球や人、社会に優しいもの作りへの思いをインタビュー。前編では、Liv:raを立ち上げたきっかけや、「新万葉染め」の魅力について伺いました。
震災をきっかけに“モノの在り方”が変わった。Liv:raを立ち上げたきっかけ
Liv:raを立ち上げた経緯を教えてください。
私は新卒で大量生産のファッションを取り扱う会社に入社し、デザイナーとして働いていました。当時の業界では売れ残った衣類を破棄するのが当たり前の時代。大量生産・大量消費されていくシステムに疑問を抱いていたものの、「ファッション業界はこういうものだ」と感じながら日々を過ごしていました。
26歳で独立後は、大量生産されているアイテムを仕入れて、通販サイトでタイミングに合わせて広告を打ち、販売するビジネスを行っていました。会社員時代と同じ“大量消費”ビジネスをしていたのですが、2011年の東日本大震災をきっかけに、“モノの在り方”について考えるようになったんです。
私はものがどのように作られているのかを、全く知らないと気がついて。流通の販路が複雑で不透明なものを使い続けることが、自分の中では気持ち悪いと感じるようになったんです。商品が生まれた背景をきちんと理解して、共感するものでビジネスをしたいと思うようになり、2013年にLiv:raを立ち上げました。
考え方が変化した後、なぜ草木染めを選んだのでしょうか?
背景を理解して共感できるだけではなく、同時に「環境にいいもの」が作りたいと考えていました。昔から環境問題に興味があったことと、ファッション業界の水質汚染が気になっていて、「水」に対していい影響を与えられるもの作りがしたかったんです。
衣類を染めるときに必要な化学染料は、実は水質汚染の原因の20%を占めていると言われています。ファッション業界で働く者として、「なんとかして汚染をなくしたい」という強い気持ちが常々あったんですね。
また、私は普段からカラフルな色の洋服が好きだったため、環境を汚さずに色をつけられる方法も探していたんです。そんなときに、天然の染料で色鮮やかに染められる「新万葉染め」に出会いました。早速職人さんに連絡をして思いを伝え、一緒に作らせていただくこととなりました。
染料も水も少量でいい。環境に優しい「新万葉染め」の魅力
「新万葉染め」はどのような技法なのでしょうか?
新万葉染めは、今もご一緒させていただいている京都 川端商店の川端康夫さんと、三重大学名誉教授であった木村光雄先生が開発された染色技法です。植物の色素を分子レベルまで細分化し、従来の草木染めよりも少量で早く染められることが特徴です。染料が少量で済むため、使用する水も少なくなります。排水しても自然に回帰するため環境に優しいんですよ。
また、少量で早く染められることにより、作り手の負担やコストも減りました。品質のよいものを無理なくコンスタントに作れるようになったことも、ブランドを続ける上での大きなメリットだと感じています。
Liv:raに使用している植物のこだわりを教えてください。
発色が良くて色落ちがしにくく、汗や洗濯に強い植物を選んでいます。植物ごとに特徴が違うので職人さんと相談して選んでいますね。
草木染めは、昔から色を楽しむというよりも、植物が持つ薬効成分を期待して使われていたとも言われています。例えばピンク色に染まる「茜」の根っこは保温性があるそうです。茜の根で洋服を染めることで体を温め、“自分を守る”という考え方があったと言われています。
Liv:raもこの考え方に共感していて。草木染めが環境にとっていいものだけではなく、“自分を大切にするお守り”になるように植物を選び、発信を行っています。そうすることで、下着を通してお客様が自分自身を大切にすることにも繋がると思っています。
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小森優美 プロフィール
株式会社HighLogic代表取締役/エシカルファッションデザイナー
新卒でSPA型アパレル会社にデザイナーとして勤務後、2010年26歳で独立。2013年に草木染めシルクランジェリーブランド「Liv:ra(リブラ)」を立ち上げる。「新万葉染め」の技法を使い、京都 川端商店と共にエシカルなランジェリーアイテム作りを行う。
Instagram @yumi_komori_
Liv:ra https://livra.shop/
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